年金引下げ違憲訴訟パンフの要約と解説Ⅰ

 

2018年4月  年金者組合愛知県本部

 

 

 

はじめに 

 

5133人[i]の原告、44県39地方裁判所、300人を超える弁護士(訴訟代理人)、5学者[ii]の意見書など社会保障(年金)裁判は3年を経過して、テレビ、新聞、週刊誌などでも取り上げられて国民世論に一定のインパクト[iii]を与えている。しかし、国民的な広がりにはなっていない。この冊子の学習を通じて年金裁判[iv]の到達点を理解していただきたい。

 

 

 

Ⅰ 裁判の論争点と当面する裁判運動の課題 

 

 

 

1 1人ひとりの訴えが世論を動かしつつある~裁判運動はどこまできたか

 

 2015年から3年がたって、一人一人の陳述(冊子・叫び)[v]は、政府の担うべき生活実態が憲法を踏みにじっているかを告発する役割を果たしている。社会に浸透しつつあることに確信にしたい。憲法裁判であり、25条[vi]、13条[vii]、29条[viii]が問われている。9条改憲と表裏一体であり、憲法を生活に生かす大きな位置付けと持ちつつあることも大切です。

 

2 裁判の論争点~裁判で何が問題となっているか

 

 国は「財政難[ix]」「制度の維持[x]」「世代間の公平[xi]」のワンフレーズだった。裁判の中で年金減額を筋道たてて説明しなければならないところに追い込んでいる。論争点は以下の通り。

 

(1) 国は自由に年金支給額を引下げることができるのか?~立法と裁判所の関係

 

国は、(昭和57最高裁判決[xii]を盾に)立法府には広い裁量権(国会が決める権利)があり、著しく合理性を欠いている場合を除き裁判所が審査判断をすることではないと主張している。原告(私達)は、憲法25条2項の「向上及び増進」(後退禁止)を率直に読めば実質的な引き下げは許されない。あくまでというなら厳格な立証(ワンフレーズでなく、負担は公平か・生きていけるかなど生の実態を証明[xiii])が必要としていると反論している。

 

(2) 国は説明責任を果たさなくてよいのか?~社会権規約が定める後退禁止原則

 

     社会権規約9条は「すべての者の権利を認める」と定め、2条1項は、「権利の完全な実現を進めること、利用可能な手段を利用すること」を求めている。後退的な処置を禁じ、必要なら合理性を立証[xiv]せよとしている。

 

(3) 公的年金は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しなくてよいのか?~憲法25条と最低保障年金制度

 

    国は、年金だけでなく生活保護がある。原告は、生活保護は「自立の助長が目的」「資産調査と恥の意識の障害(生活保護とるのは恥)がある」と主張し、「生活保護も下げている」年金だけで「最低で文化的な生活が出来ること(25条)[xv]です。

 

(4) 減額は年金受給者権の侵害ではないのか?~憲法13条、29条の問題

 

 原告は、「年金は財産権であり29条1項と個人の尊厳13条に保障されている」最高裁も(昭和53・7判決[xvi]で公共の福祉のためには制限があるとしている。①財産権の性質②変更の程度③変更が公益のどんな性質かなどを総合的に判断せよと言っている。①生活直結の年金②不利益は重大③平成24年法は原告等の意見を聞いていないので前記に反している。

 

(5) 国はどのように弁明しているのか?~減額の必要性、合理性をめぐる争点

 

 国は、「特例水準が長引き将来世代に影響・世代間の公平・制度の持続可能」が認められるべき。原告は、世代間の公平とは何か・年金を削って積立金を残すのか・マクロ経済スライドは年金制度を破壊し憲法違反[xvii]」。そういう憲法違反制度のために2・5%を引下げる憲法違反をするのか。

 

3 当面の課題

 

~裁判官の心を動かし勝利するために何をなすべきか?

 

  裁判所は、原告と被告の主張を裏付ける証拠調べに入ります。どういう人、どのように調べるかです。

 

(1) 原告団の陳述書作成運動を!

 

現在、最も大事なことです。原告は、裁判官の先輩です。内容は違っても最後の結論は伝わります。「ひとり一人が自分の歩んできた人生や今の生活で考えていること、政治への怒りを」書けば、今までの陳述でも、戦後どんな苦労をしたかなどは大きな感銘を与えています。東京では半分以上の人が陳述書[xviii]を出し裁判官に大きな影響を与えています。

 

(2) 総論立証のできる組合側の証人を!

 

この間の年金制度の歴史、とくに度重なる制度改悪の経過や今回の減額の不当性について明らかにする証人が必要です。国と渡り合える人は年金者組合の中にいます。現在の国や裁判官では経験したことにないことを知っている生き証人がいます。

 

(3) 地元の学者の協力を!

 

憲法論、政策論、経済論、財政論などになりますが、それぞれの地域で年金の経済的波及効果は違うということが解りました。地元のことを証人も含めて準備することです。愛知はまだです。

 

(4) 現役世代、社会保障関係者の協力を!

 

「世代間公平論」を現職や若い人に反論してもらいます。愛知は愛労連と相談中です。

 

(5) 裁判所の姿勢を変える強固な運動を!

 

劣化している政治を「立法裁量だから仕方がない」という裁判所ではなく、憲法の立場か 

 

ら判決するようにさせます。同時に国民的な運動で多数派になる努力が大事です。憲法25条や教育を受ける権利の26条を実現していく、希望を語る運動です。

 



[i] 5044人となっているが新潟県本部が提訴し、5133人に増えている。

[ii] 伊藤周平鹿児島大教授、申恵丰青山学院大学教授、尾形健同志社大学教授、唐鎌直義立命館大学特任教授、井上英夫金沢大学名誉教授の5教授のこと。

 

[iii] インパクトとは、物理的あるいは心理的衝撃のこと。

 

[iv] 裁判とは、統治機構と人権を守るという二面性がある。(運動で)国に従うのをこちらに引き寄せ人権を守らせることである。

 

[v] 201612月に年金者組合が発行した「それまでの裁判で79人の原告が陳述した陳述集」のこと。

 

[vi] 国民に「文化的で最低限の生活を保障する。(1項)」「国は向上と増進に努めなければならない。(2項)」とからなる憲法25条の生存権保障条項のこと。自民党改憲案もこれには手をふれていない。

 

[vii] 「国民は、個人として尊重される。生命、自由、幸福追求権に最大の尊重を必要とする」とした憲法13条のこと。自民党改憲案は「個人」を「人」に改悪しようとしている。

 

[viii] 「財産権は、公共の福祉に反しない限り尊重する」とした憲法29条のこと。年金は財産権と歴代政府も最高裁も認めている。最低保障の無い6万円年金からいったん法定化した年金額の削減をして公共の福祉に反しないのか。

 

[ix] 年金財政については、厚生年金の標準比例報酬が最高62万円に設定されており、これを上回る人が200万人以上存在する。139万円の医療制度水準にすれば年間2兆円余の増収が見込まれる。給付は一定額にとどめているアメリカ方式にすればよいと厚労省も提案している。経団連が反対しているだけである。

 

[x] 2004年の「マクロ経済スライド」等の導入によって「100年安心」と言われた「小泉改革」は現在破綻している。積立金を2年程度残して活用すれば「マクロ経済スライド」をなくしても制度は持続可能である。

 

[xi] 厚生労働白書平成28年度版によれば、2050年には、12人の現役労働者(20歳~65歳)が1人の高齢者(65歳以上)を支えるといい、1950年時点では10人で1人を支えていたと書かれている。しかし、少子高齢社会論は二つの側面がある。①出生率が2以上となるような安心して子育てが出来ること。女性も民主的な権利(男女平等など)が保障される社会とすること(教育・賃金・社会保障の充実等)②それが実現しなくても、社会的・経済的な平等を実現して「格差・不平等社会を改革すれば可能」ということである。

 

[xii] 堀木訴訟最高裁判決のこと。生存権(憲法25条)を具体化する立法について、それは「広い立法裁量につだねられ」、「いちじるしく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ないような場合」にのみ司法審査が及ぶとする基準を示している。*尾形意見書参照。

 

[xiii] 生の実態の証明とは、次項の国側の証明もさせなければならないが、朝日訴訟のように「朝日訴訟地裁判決は、当時の朝日さんはじめ病院患者の生活実態、生活保護の金額を考慮すれば、至極妥当な判決であるといえる。何よりも、裁判の過程で、裁判官が朝日さんや当時の病院患者の元を直接訪れて調査や臨床尋問をし、人間の健康で文化的な生活が何かを真摯に検証しようとする姿勢があった。現実を目の当たりにする中で憲法と良心に従って検証され言い渡された判決であり、裁判官が憲法通りの職責をになった恒例と言える。」*「社会保障レボリューション・いのちの砦・社会保障裁判」井上英夫他編・高菅出版P56参照。

[xiv] 合理性を立証とは、社会権規約の一般的意見19の後退的処置の説明責任のこと。42 社会保障に対する権利に関連してとられた後退的処置は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関連によってそれが正当化されることを証明する責任を負う。a)行為を正当化する理由があるか否か、(b)選択肢が包括的に検討されたか否か、(c)提案されている処置及び選択肢を検討する際に、影響を受ける集団の真の意味での参加があったか否か、(d)措置が直接的又は間接的に差別的であったか否か、(e)措置が、社会保障に対する権利の実現に持続的な影響力を及ぼすか、既得の社会保障権に不合理な影響を及ぼすか、もしくは個人又は集団が社会保障の最低限不可欠なレベルへのアクセスを奪われているか。

*名古屋地裁での反論(第8回期日)(a)正当化する理由はない。特例処置がデフレからの脱却、景気回復に効果があったのか。逆に特例水準を採らないで全体の経済が好転したのか。被告は実証的な分析や検証を行っていない。(b)包括的に検討していない。年金を引下げるのではなく、他の手段があったのではないか。他の選択肢を検討していない。削減ありきである。(c)一律に減額し、3000万人の年金生活者に深刻な打撃を与えた。衆参2日間の審議で成立させた。「世代間の公平を図るため」としているだけである。パブリックコメント、公聴会も開かれず、十分な審議をしないのは議会制民主主義を踏みにじるものである。(d)最低保障年金制度が確立しない状況で、生活保護すれすれの世帯も一律に減額することは生活保護以下の世帯を拡大する。(e)一律減額の持続的な影響がある。「世代間の公平」「持続可能な年金制度の維持」としていますがそもそも年金財政の健全化は、制度全体から検証されなければならない。後退的処置をとるときには、その合理性について、厳しく問われるべきである。

*以上の具体的内容は、全日本年金者組合が201710月に発行した冊子「私たちの心の叫び憲法に根ざして」の伊藤周平氏及び申恵丰氏「意見書集」にも詳細に述べられている。

 

[xv] 国民年金法の歴史から①1959年に国民年金法は「国民皆年金」を旗印に提案された。当時、既に一定の年齢に達していた人たちには無拠出の福祉年金が支給されたが基本は拠出制であった。国民年金法には「厚生年金保険法」のように保険という字が付いていない。しかし、保険主義によって、総ての国民に憲法25条の生存権に値する「最低で文化的な生活を保障する」ものではなかった。②全日本年金者組合はすべての高齢者に月額8万円の最低保障年金を」提案して闘っている。この裁判も政策形成裁判として最低保障年金制度の創設が大きな課題である。その詳細は「年金引下げ違憲訴訟パンフの要約と解Ⅲ・年金制度の変遷と問題点」で説明する。

 

[xvi] 国有農地等売払特措法事件最高裁判決のこと。「変更が公共の福祉に適合するようになされたものであるかどうかは、a)いったん定められた法律に基づく財産権の性質、(b)その内容を変更する程度、及び(c)これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断すべきである」としている。

 

[xvii] 世代間の公平を「現職(20歳から65歳まで)の数と年金生活者の数の割合に矮小化」し、保険料の基準(標準比例報酬最高が62万円止まりなど)や国民年金未加入者が大量にいること(その中には多くの高額給与所得者が居るなど)「保険料と税金が応能負担になっていない」不合理が見過ごされている。また、現在の積立金が「25年の保険料の支払期間」という世界一の年金受給有資格取得期間のために積立金が生じているのに有効に積立金を使っていない。

 

[xviii] 原告はで「年金制度への怒りから」あるいは「知人や友人の中で年金制度への不満を持っている人」などからも話を聞いて陳述書を書くことです。裁判官が経験したことのない先輩として「戦後の苦労、高度成長期の過酷な労働など」を率直に書くこと裁判運動を朝日訴訟のように現場の調査や特養等の臨床尋問をおこなってもらうなどに発展させることです。

(作成担当者は学習部:茶谷寛信)

 

 

[1] 5044人となっているが新潟県本部が提訴し、5133人に増えている。

 

[1] 伊藤周平鹿児島大教授、申恵丰青山学院大学教授、尾形健同志社大学教授、唐鎌直義立命館大学特任教授、井上英夫金沢大学名誉教授の5教授のこと。

 

 

 

[1] インパクトとは、物理的あるいは心理的衝撃のこと。

 

 

 

[1] 裁判とは、統治機構と人権を守るという二面性がある。(運動で)国に従うのをこちらに引き寄せ人権を守らせることである。

 

 

 

[1] 201612月に年金者組合が発行した「それまでの裁判で79人の原告が陳述した陳述集」のこと。

 

 

 

[1] 国民に「文化的で最低限の生活を保障する。(1項)」「国は向上と増進に努めなければならない。(2項)」とからなる憲法25条の生存権保障条項のこと。自民党改憲案もこれには手をふれていない。

 

 

 

[1] 「国民は、個人として尊重される。生命、自由、幸福追求権に最大の尊重を必要とする」とした憲法13条のこと。自民党改憲案は「個人」を「人」に改悪しようとしている。

 

 

 

[1] 「財産権は、公共の福祉に反しない限り尊重する」とした憲法29条のこと。年金は財産権と歴代政府も最高裁も認めている。最低保障の無い6万円年金からいったん法定化した年金額の削減をして公共の福祉に反しないのか。

 

 

 

[1] 年金財政については、厚生年金の標準比例報酬が最高62万円に設定されており、これを上回る人が200万人以上存在する。139万円の医療制度水準にすれば年間2兆円余の増収が見込まれる。給付は一定額にとどめているアメリカ方式にすればよいと厚労省も提案している。経団連が反対しているだけである。

 

 

 

[1] 2004年の「マクロ経済スライド」等の導入によって「100年安心」と言われた「小泉改革」は現在破綻している。積立金を2年程度残して活用すれば「マクロ経済スライド」をなくしても制度は持続可能である。

 

 

 

[1] 厚生労働白書平成28年度版によれば、2050年には、12人の現役労働者(20歳~65歳)が1人の高齢者(65歳以上)を支えるといい、1950年時点では10人で1人を支えていたと書かれている。しかし、少子高齢社会論は二つの側面がある。①出生率が2以上となるような安心して子育てが出来ること。女性も民主的な権利(男女平等など)が保障される社会とすること(教育・賃金・社会保障の充実等)②それが実現しなくても、社会的・経済的な平等を実現して「格差・不平等社会を改革すれば可能」ということである。

 

 

 

[1] 堀木訴訟最高裁判決のこと。生存権(憲法25条)を具体化する立法について、それは「広い立法裁量につだねられ」、「いちじるしく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ないような場合」にのみ司法審査が及ぶとする基準を示している。*尾形意見書参照。

 

 

 

[1] 生の実態の証明とは、次項の国側の証明もさせなければならないが、朝日訴訟のように「朝日訴訟地裁判決は、当時の朝日さんはじめ病院患者の生活実態、生活保護の金額を考慮すれば、至極妥当な判決であるといえる。何よりも、裁判の過程で、裁判官が朝日さんや当時の病院患者の元を直接訪れて調査や臨床尋問をし、人間の健康で文化的な生活が何かを真摯に検証しようとする姿勢があった。現実を目の当たりにする中で憲法と良心に従って検証され言い渡された判決であり、裁判官が憲法通りの職責をになった恒例と言える。」*「社会保障レボリューション・いのちの砦・社会保障裁判」井上英夫他編・高菅出版P56参照。

 

[1] 合理性を立証とは、社会権規約の一般的意見19の後退的処置の説明責任のこと。42 社会保障に対する権利に関連してとられた後退的処置は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関連によってそれが正当化されることを証明する責任を負う。a)行為を正当化する理由があるか否か、(b)選択肢が包括的に検討されたか否か、(c)提案されている処置及び選択肢を検討する際に、影響を受ける集団の真の意味での参加があったか否か、(d)措置が直接的又は間接的に差別的であったか否か、(e)措置が、社会保障に対する権利の実現に持続的な影響力を及ぼすか、既得の社会保障権に不合理な影響を及ぼすか、もしくは個人又は集団が社会保障の最低限不可欠なレベルへのアクセスを奪われているか。

 

*名古屋地裁での反論(第8回期日)(a)正当化する理由はない。特例処置がデフレからの脱却、景気回復に効果があったのか。逆に特例水準を採らないで全体の経済が好転したのか。被告は実証的な分析や検証を行っていない。(b)包括的に検討していない。年金を引下げるのではなく、他の手段があったのではないか。他の選択肢を検討していない。削減ありきである。(c)一律に減額し、3000万人の年金生活者に深刻な打撃を与えた。衆参2日間の審議で成立させた。「世代間の公平を図るため」としているだけである。パブリックコメント、公聴会も開かれず、十分な審議をしないのは議会制民主主義を踏みにじるものである。(d)最低保障年金制度が確立しない状況で、生活保護すれすれの世帯も一律に減額することは生活保護以下の世帯を拡大する。(e)一律減額の持続的な影響がある。「世代間の公平」「持続可能な年金制度の維持」としていますがそもそも年金財政の健全化は、制度全体から検証されなければならない。後退的処置をとるときには、その合理性について、厳しく問われるべきである。

 

*以上の具体的内容は、全日本年金者組合が201710月に発行した冊子「私たちの心の叫び憲法に根ざして」の伊藤周平氏及び申恵丰氏「意見書集」にも詳細に述べられている。

 

 

 

[1] 国民年金法の歴史から①1959年に国民年金法は「国民皆年金」を旗印に提案された。当時、既に一定の年齢に達していた人たちには無拠出の福祉年金が支給されたが基本は拠出制であった。国民年金法には「厚生年金保険法」のように保険という字が付いていない。しかし、保険主義によって、総ての国民に憲法25条の生存権に値する「最低で文化的な生活を保障する」ものではなかった。②全日本年金者組合はすべての高齢者に月額8万円の最低保障年金を」提案して闘っている。この裁判も政策形成裁判として最低保障年金制度の創設が大きな課題である。その詳細は「年金引下げ違憲訴訟パンフの要約と解Ⅲ・年金制度の変遷と問題点」で説明する。

 

 

 

[1] 国有農地等売払特措法事件最高裁判決のこと。「変更が公共の福祉に適合するようになされたものであるかどうかは、a)いったん定められた法律に基づく財産権の性質、(b)その内容を変更する程度、及び(c)これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断すべきである」としている。

 

 

 

[1] 世代間の公平を「現職(20歳から65歳まで)の数と年金生活者の数の割合に矮小化」し、保険料の基準(標準比例報酬最高が62万円止まりなど)や国民年金未加入者が大量にいること(その中には多くの高額給与所得者が居るなど)「保険料と税金が応能負担になっていない」不合理が見過ごされている。また、現在の積立金が「25年の保険料の支払期間」という世界一の年金受給有資格取得期間のために積立金が生じているのに有効に積立金を使っていない。

 

 

 

[1] 原告はで「年金制度への怒りから」あるいは「知人や友人の中で年金制度への不満を持っている人」などからも話を聞いて陳述書を書くことです。裁判官が経験したことのない先輩として「戦後の苦労、高度成長期の過酷な労働など」を率直に書くこと裁判運動を朝日訴訟のように現場の調査や特養等の臨床尋問をおこなってもらうなどに発展させることです。

 

(作成担当者は学習部:茶谷寛信)

 

 

年金引下げ違憲訴訟パンフの要約と解説Ⅰ

 

2018年4月  年金者組合愛知県本部

 

 

 

はじめに 

 

5133人[i]の原告、44県39地方裁判所、300人を超える弁護士(訴訟代理人)、5学者[ii]の意見書など社会保障(年金)裁判は3年を経過して、テレビ、新聞、週刊誌などでも取り上げられて国民世論に一定のインパクト[iii]を与えている。しかし、国民的な広がりにはなっていない。この冊子の学習を通じて年金裁判[iv]の到達点を理解していただきたい。

 

 

 

Ⅰ 裁判の論争点と当面する裁判運動の課題 

 

 

 

1 1人ひとりの訴えが世論を動かしつつある~裁判運動はどこまできたか

 

 2015年から3年がたって、一人一人の陳述(冊子・叫び)[v]は、政府の担うべき生活実態が憲法を踏みにじっているかを告発する役割を果たしている。社会に浸透しつつあることに確信にしたい。憲法裁判であり、25条[vi]、13条[vii]、29条[viii]が問われている。9条改憲と表裏一体であり、憲法を生活に生かす大きな位置付けと持ちつつあることも大切です。

 

2 裁判の論争点~裁判で何が問題となっているか

 

 国は「財政難[ix]」「制度の維持[x]」「世代間の公平[xi]」のワンフレーズだった。裁判の中で年金減額を筋道たてて説明しなければならないところに追い込んでいる。論争点は以下の通り。

 

(1) 国は自由に年金支給額を引下げることができるのか?~立法と裁判所の関係

 

国は、(昭和57最高裁判決[xii]を盾に)立法府には広い裁量権(国会が決める権利)があり、著しく合理性を欠いている場合を除き裁判所が審査判断をすることではないと主張している。原告(私達)は、憲法25条2項の「向上及び増進」(後退禁止)を率直に読めば実質的な引き下げは許されない。あくまでというなら厳格な立証(ワンフレーズでなく、負担は公平か・生きていけるかなど生の実態を証明[xiii])が必要としていると反論している。

 

(2) 国は説明責任を果たさなくてよいのか?~社会権規約が定める後退禁止原則

 

     社会権規約9条は「すべての者の権利を認める」と定め、2条1項は、「権利の完全な実現を進めること、利用可能な手段を利用すること」を求めている。後退的な処置を禁じ、必要なら合理性を立証[xiv]せよとしている。

 

(3) 公的年金は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しなくてよいのか?~憲法25条と最低保障年金制度

 

    国は、年金だけでなく生活保護がある。原告は、生活保護は「自立の助長が目的」「資産調査と恥の意識の障害(生活保護とるのは恥)がある」と主張し、「生活保護も下げている」年金だけで「最低で文化的な生活が出来ること(25条)[xv]です。

 

(4) 減額は年金受給者権の侵害ではないのか?~憲法13条、29条の問題

 

 原告は、「年金は財産権であり29条1項と個人の尊厳13条に保障されている」最高裁も(昭和53・7判決[xvi]で公共の福祉のためには制限があるとしている。①財産権の性質②変更の程度③変更が公益のどんな性質かなどを総合的に判断せよと言っている。①生活直結の年金②不利益は重大③平成24年法は原告等の意見を聞いていないので前記に反している。

 

(5) 国はどのように弁明しているのか?~減額の必要性、合理性をめぐる争点

 

 国は、「特例水準が長引き将来世代に影響・世代間の公平・制度の持続可能」が認められるべき。原告は、世代間の公平とは何か・年金を削って積立金を残すのか・マクロ経済スライドは年金制度を破壊し憲法違反[xvii]」。そういう憲法違反制度のために2・5%を引下げる憲法違反をするのか。

 

3 当面の課題

 

~裁判官の心を動かし勝利するために何をなすべきか?

 

  裁判所は、原告と被告の主張を裏付ける証拠調べに入ります。どういう人、どのように調べるかです。

 

(1) 原告団の陳述書作成運動を!

 

現在、最も大事なことです。原告は、裁判官の先輩です。内容は違っても最後の結論は伝わります。「ひとり一人が自分の歩んできた人生や今の生活で考えていること、政治への怒りを」書けば、今までの陳述でも、戦後どんな苦労をしたかなどは大きな感銘を与えています。東京では半分以上の人が陳述書[xviii]を出し裁判官に大きな影響を与えています。

 

(2) 総論立証のできる組合側の証人を!

 

この間の年金制度の歴史、とくに度重なる制度改悪の経過や今回の減額の不当性について明らかにする証人が必要です。国と渡り合える人は年金者組合の中にいます。現在の国や裁判官では経験したことにないことを知っている生き証人がいます。

 

(3) 地元の学者の協力を!

 

憲法論、政策論、経済論、財政論などになりますが、それぞれの地域で年金の経済的波及効果は違うということが解りました。地元のことを証人も含めて準備することです。愛知はまだです。

 

(4) 現役世代、社会保障関係者の協力を!

 

「世代間公平論」を現職や若い人に反論してもらいます。愛知は愛労連と相談中です。

 

(5) 裁判所の姿勢を変える強固な運動を!

 

劣化している政治を「立法裁量だから仕方がない」という裁判所ではなく、憲法の立場か 

 

ら判決するようにさせます。同時に国民的な運動で多数派になる努力が大事です。憲法25条や教育を受ける権利の26条を実現していく、希望を語る運動です。

 



[i] 5044人となっているが新潟県本部が提訴し、5133人に増えている。

[ii] 伊藤周平鹿児島大教授、申恵丰青山学院大学教授、尾形健同志社大学教授、唐鎌直義立命館大学特任教授、井上英夫金沢大学名誉教授の5教授のこと。

 

[iii] インパクトとは、物理的あるいは心理的衝撃のこと。

 

[iv] 裁判とは、統治機構と人権を守るという二面性がある。(運動で)国に従うのをこちらに引き寄せ人権を守らせることである。

 

[v] 201612月に年金者組合が発行した「それまでの裁判で79人の原告が陳述した陳述集」のこと。

 

[vi] 国民に「文化的で最低限の生活を保障する。(1項)」「国は向上と増進に努めなければならない。(2項)」とからなる憲法25条の生存権保障条項のこと。自民党改憲案もこれには手をふれていない。

 

[vii] 「国民は、個人として尊重される。生命、自由、幸福追求権に最大の尊重を必要とする」とした憲法13条のこと。自民党改憲案は「個人」を「人」に改悪しようとしている。

 

[viii] 「財産権は、公共の福祉に反しない限り尊重する」とした憲法29条のこと。年金は財産権と歴代政府も最高裁も認めている。最低保障の無い6万円年金からいったん法定化した年金額の削減をして公共の福祉に反しないのか。

 

[ix] 年金財政については、厚生年金の標準比例報酬が最高62万円に設定されており、これを上回る人が200万人以上存在する。139万円の医療制度水準にすれば年間2兆円余の増収が見込まれる。給付は一定額にとどめているアメリカ方式にすればよいと厚労省も提案している。経団連が反対しているだけである。

 

[x] 2004年の「マクロ経済スライド」等の導入によって「100年安心」と言われた「小泉改革」は現在破綻している。積立金を2年程度残して活用すれば「マクロ経済スライド」をなくしても制度は持続可能である。

 

[xi] 厚生労働白書平成28年度版によれば、2050年には、12人の現役労働者(20歳~65歳)が1人の高齢者(65歳以上)を支えるといい、1950年時点では10人で1人を支えていたと書かれている。しかし、少子高齢社会論は二つの側面がある。①出生率が2以上となるような安心して子育てが出来ること。女性も民主的な権利(男女平等など)が保障される社会とすること(教育・賃金・社会保障の充実等)②それが実現しなくても、社会的・経済的な平等を実現して「格差・不平等社会を改革すれば可能」ということである。

 

[xii] 堀木訴訟最高裁判決のこと。生存権(憲法25条)を具体化する立法について、それは「広い立法裁量につだねられ」、「いちじるしく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ないような場合」にのみ司法審査が及ぶとする基準を示している。*尾形意見書参照。

 

[xiii] 生の実態の証明とは、次項の国側の証明もさせなければならないが、朝日訴訟のように「朝日訴訟地裁判決は、当時の朝日さんはじめ病院患者の生活実態、生活保護の金額を考慮すれば、至極妥当な判決であるといえる。何よりも、裁判の過程で、裁判官が朝日さんや当時の病院患者の元を直接訪れて調査や臨床尋問をし、人間の健康で文化的な生活が何かを真摯に検証しようとする姿勢があった。現実を目の当たりにする中で憲法と良心に従って検証され言い渡された判決であり、裁判官が憲法通りの職責をになった恒例と言える。」*「社会保障レボリューション・いのちの砦・社会保障裁判」井上英夫他編・高菅出版P56参照。

[xiv] 合理性を立証とは、社会権規約の一般的意見19の後退的処置の説明責任のこと。42 社会保障に対する権利に関連してとられた後退的処置は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関連によってそれが正当化されることを証明する責任を負う。a)行為を正当化する理由があるか否か、(b)選択肢が包括的に検討されたか否か、(c)提案されている処置及び選択肢を検討する際に、影響を受ける集団の真の意味での参加があったか否か、(d)措置が直接的又は間接的に差別的であったか否か、(e)措置が、社会保障に対する権利の実現に持続的な影響力を及ぼすか、既得の社会保障権に不合理な影響を及ぼすか、もしくは個人又は集団が社会保障の最低限不可欠なレベルへのアクセスを奪われているか。

*名古屋地裁での反論(第8回期日)(a)正当化する理由はない。特例処置がデフレからの脱却、景気回復に効果があったのか。逆に特例水準を採らないで全体の経済が好転したのか。被告は実証的な分析や検証を行っていない。(b)包括的に検討していない。年金を引下げるのではなく、他の手段があったのではないか。他の選択肢を検討していない。削減ありきである。(c)一律に減額し、3000万人の年金生活者に深刻な打撃を与えた。衆参2日間の審議で成立させた。「世代間の公平を図るため」としているだけである。パブリックコメント、公聴会も開かれず、十分な審議をしないのは議会制民主主義を踏みにじるものである。(d)最低保障年金制度が確立しない状況で、生活保護すれすれの世帯も一律に減額することは生活保護以下の世帯を拡大する。(e)一律減額の持続的な影響がある。「世代間の公平」「持続可能な年金制度の維持」としていますがそもそも年金財政の健全化は、制度全体から検証されなければならない。後退的処置をとるときには、その合理性について、厳しく問われるべきである。

*以上の具体的内容は、全日本年金者組合が201710月に発行した冊子「私たちの心の叫び憲法に根ざして」の伊藤周平氏及び申恵丰氏「意見書集」にも詳細に述べられている。

 

[xv] 国民年金法の歴史から①1959年に国民年金法は「国民皆年金」を旗印に提案された。当時、既に一定の年齢に達していた人たちには無拠出の福祉年金が支給されたが基本は拠出制であった。国民年金法には「厚生年金保険法」のように保険という字が付いていない。しかし、保険主義によって、総ての国民に憲法25条の生存権に値する「最低で文化的な生活を保障する」ものではなかった。②全日本年金者組合はすべての高齢者に月額8万円の最低保障年金を」提案して闘っている。この裁判も政策形成裁判として最低保障年金制度の創設が大きな課題である。その詳細は「年金引下げ違憲訴訟パンフの要約と解Ⅲ・年金制度の変遷と問題点」で説明する。

 

[xvi] 国有農地等売払特措法事件最高裁判決のこと。「変更が公共の福祉に適合するようになされたものであるかどうかは、a)いったん定められた法律に基づく財産権の性質、(b)その内容を変更する程度、及び(c)これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断すべきである」としている。

 

[xvii] 世代間の公平を「現職(20歳から65歳まで)の数と年金生活者の数の割合に矮小化」し、保険料の基準(標準比例報酬最高が62万円止まりなど)や国民年金未加入者が大量にいること(その中には多くの高額給与所得者が居るなど)「保険料と税金が応能負担になっていない」不合理が見過ごされている。また、現在の積立金が「25年の保険料の支払期間」という世界一の年金受給有資格取得期間のために積立金が生じているのに有効に積立金を使っていない。

 

[xviii] 原告はで「年金制度への怒りから」あるいは「知人や友人の中で年金制度への不満を持っている人」などからも話を聞いて陳述書を書くことです。裁判官が経験したことのない先輩として「戦後の苦労、高度成長期の過酷な労働など」を率直に書くこと裁判運動を朝日訴訟のように現場の調査や特養等の臨床尋問をおこなってもらうなどに発展させることです。

(作成担当者は学習部:茶谷寛信)

 

 

[1] 5044人となっているが新潟県本部が提訴し、5133人に増えている。

 

[1] 伊藤周平鹿児島大教授、申恵丰青山学院大学教授、尾形健同志社大学教授、唐鎌直義立命館大学特任教授、井上英夫金沢大学名誉教授の5教授のこと。

 

 

 

[1] インパクトとは、物理的あるいは心理的衝撃のこと。

 

 

 

[1] 裁判とは、統治機構と人権を守るという二面性がある。(運動で)国に従うのをこちらに引き寄せ人権を守らせることである。

 

 

 

[1] 201612月に年金者組合が発行した「それまでの裁判で79人の原告が陳述した陳述集」のこと。

 

 

 

[1] 国民に「文化的で最低限の生活を保障する。(1項)」「国は向上と増進に努めなければならない。(2項)」とからなる憲法25条の生存権保障条項のこと。自民党改憲案もこれには手をふれていない。

 

 

 

[1] 「国民は、個人として尊重される。生命、自由、幸福追求権に最大の尊重を必要とする」とした憲法13条のこと。自民党改憲案は「個人」を「人」に改悪しようとしている。

 

 

 

[1] 「財産権は、公共の福祉に反しない限り尊重する」とした憲法29条のこと。年金は財産権と歴代政府も最高裁も認めている。最低保障の無い6万円年金からいったん法定化した年金額の削減をして公共の福祉に反しないのか。

 

 

 

[1] 年金財政については、厚生年金の標準比例報酬が最高62万円に設定されており、これを上回る人が200万人以上存在する。139万円の医療制度水準にすれば年間2兆円余の増収が見込まれる。給付は一定額にとどめているアメリカ方式にすればよいと厚労省も提案している。経団連が反対しているだけである。

 

 

 

[1] 2004年の「マクロ経済スライド」等の導入によって「100年安心」と言われた「小泉改革」は現在破綻している。積立金を2年程度残して活用すれば「マクロ経済スライド」をなくしても制度は持続可能である。

 

 

 

[1] 厚生労働白書平成28年度版によれば、2050年には、12人の現役労働者(20歳~65歳)が1人の高齢者(65歳以上)を支えるといい、1950年時点では10人で1人を支えていたと書かれている。しかし、少子高齢社会論は二つの側面がある。①出生率が2以上となるような安心して子育てが出来ること。女性も民主的な権利(男女平等など)が保障される社会とすること(教育・賃金・社会保障の充実等)②それが実現しなくても、社会的・経済的な平等を実現して「格差・不平等社会を改革すれば可能」ということである。

 

 

 

[1] 堀木訴訟最高裁判決のこと。生存権(憲法25条)を具体化する立法について、それは「広い立法裁量につだねられ」、「いちじるしく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ないような場合」にのみ司法審査が及ぶとする基準を示している。*尾形意見書参照。

 

 

 

[1] 生の実態の証明とは、次項の国側の証明もさせなければならないが、朝日訴訟のように「朝日訴訟地裁判決は、当時の朝日さんはじめ病院患者の生活実態、生活保護の金額を考慮すれば、至極妥当な判決であるといえる。何よりも、裁判の過程で、裁判官が朝日さんや当時の病院患者の元を直接訪れて調査や臨床尋問をし、人間の健康で文化的な生活が何かを真摯に検証しようとする姿勢があった。現実を目の当たりにする中で憲法と良心に従って検証され言い渡された判決であり、裁判官が憲法通りの職責をになった恒例と言える。」*「社会保障レボリューション・いのちの砦・社会保障裁判」井上英夫他編・高菅出版P56参照。

 

[1] 合理性を立証とは、社会権規約の一般的意見19の後退的処置の説明責任のこと。42 社会保障に対する権利に関連してとられた後退的処置は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関連によってそれが正当化されることを証明する責任を負う。a)行為を正当化する理由があるか否か、(b)選択肢が包括的に検討されたか否か、(c)提案されている処置及び選択肢を検討する際に、影響を受ける集団の真の意味での参加があったか否か、(d)措置が直接的又は間接的に差別的であったか否か、(e)措置が、社会保障に対する権利の実現に持続的な影響力を及ぼすか、既得の社会保障権に不合理な影響を及ぼすか、もしくは個人又は集団が社会保障の最低限不可欠なレベルへのアクセスを奪われているか。

 

*名古屋地裁での反論(第8回期日)(a)正当化する理由はない。特例処置がデフレからの脱却、景気回復に効果があったのか。逆に特例水準を採らないで全体の経済が好転したのか。被告は実証的な分析や検証を行っていない。(b)包括的に検討していない。年金を引下げるのではなく、他の手段があったのではないか。他の選択肢を検討していない。削減ありきである。(c)一律に減額し、3000万人の年金生活者に深刻な打撃を与えた。衆参2日間の審議で成立させた。「世代間の公平を図るため」としているだけである。パブリックコメント、公聴会も開かれず、十分な審議をしないのは議会制民主主義を踏みにじるものである。(d)最低保障年金制度が確立しない状況で、生活保護すれすれの世帯も一律に減額することは生活保護以下の世帯を拡大する。(e)一律減額の持続的な影響がある。「世代間の公平」「持続可能な年金制度の維持」としていますがそもそも年金財政の健全化は、制度全体から検証されなければならない。後退的処置をとるときには、その合理性について、厳しく問われるべきである。

 

*以上の具体的内容は、全日本年金者組合が201710月に発行した冊子「私たちの心の叫び憲法に根ざして」の伊藤周平氏及び申恵丰氏「意見書集」にも詳細に述べられている。

 

 

 

[1] 国民年金法の歴史から①1959年に国民年金法は「国民皆年金」を旗印に提案された。当時、既に一定の年齢に達していた人たちには無拠出の福祉年金が支給されたが基本は拠出制であった。国民年金法には「厚生年金保険法」のように保険という字が付いていない。しかし、保険主義によって、総ての国民に憲法25条の生存権に値する「最低で文化的な生活を保障する」ものではなかった。②全日本年金者組合はすべての高齢者に月額8万円の最低保障年金を」提案して闘っている。この裁判も政策形成裁判として最低保障年金制度の創設が大きな課題である。その詳細は「年金引下げ違憲訴訟パンフの要約と解Ⅲ・年金制度の変遷と問題点」で説明する。

 

 

 

[1] 国有農地等売払特措法事件最高裁判決のこと。「変更が公共の福祉に適合するようになされたものであるかどうかは、a)いったん定められた法律に基づく財産権の性質、(b)その内容を変更する程度、及び(c)これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって、判断すべきである」としている。

 

 

 

[1] 世代間の公平を「現職(20歳から65歳まで)の数と年金生活者の数の割合に矮小化」し、保険料の基準(標準比例報酬最高が62万円止まりなど)や国民年金未加入者が大量にいること(その中には多くの高額給与所得者が居るなど)「保険料と税金が応能負担になっていない」不合理が見過ごされている。また、現在の積立金が「25年の保険料の支払期間」という世界一の年金受給有資格取得期間のために積立金が生じているのに有効に積立金を使っていない。

 

 

 

[1] 原告はで「年金制度への怒りから」あるいは「知人や友人の中で年金制度への不満を持っている人」などからも話を聞いて陳述書を書くことです。裁判官が経験したことのない先輩として「戦後の苦労、高度成長期の過酷な労働など」を率直に書くこと裁判運動を朝日訴訟のように現場の調査や特養等の臨床尋問をおこなってもらうなどに発展させることです。

 

(作成担当者は学習部:茶谷寛信)

 

 

年金引下げ違憲訴訟パンフの要約Ⅲ~Ⅷを除く)

 

2018年4月  作成者 茶谷寛信

 

 

 

はじめに 

 

5133人の原告、44県39地方裁判所、300人を超える弁護士(訴訟代理人)、5学者の意見書など社会保障(年金)裁判は3年を経過して、テレビ、新聞、週刊誌などでも取り上げられて国民世論に一定のインパクトを与えている。しかし、国民的な広がりにはなっていない。この冊子の学習を通じて年金裁判の到達点を理解していただきたい。

 

 

 

Ⅰ 裁判の論争点と当面する裁判運動の課題 

 

 

 

1 1人ひとりの訴えが世論を動かしつつある~裁判運動はどこまできたか

 

 2015年から3年がたって、一人一人の陳述(冊子・叫び)は、政府の担うべき生活実態が憲法を踏みにじっているかを告発する役割を果たしている。社会に浸透しつつあることに確信にしたい。憲法裁判であり、25条、13条、29条が問われている。9条改憲と表裏一体であり、憲法を生活に生かす大きな位置付けと持ちつつあることも大切です。

 

2 裁判の論争点~裁判で何が問題となっているか

 

 国は「財政難」「制度の維持」「世代間の公平」のワンフレーズだった。裁判の中で年金減額を筋道たてて説明しなければならないところに追い込んでいる。論争点は以下の通り。

 

(1) 国は自由に年金支給額を引下げることができるのか?~立法と裁判所の関係

 

国は、(昭和57最高裁判決を盾に)立法府には広い裁量権(国会が決める権利)があり、著しく合理性を欠いている場合を除き裁判所が審査判断をすることではないと主張している。原告(私達)は、憲法25条2項の「向上及び増進」(後退禁止)を率直に読めば実質的な引き下げは許されない。あくまでというなら厳格な立証(ワンフレーズでなく、負担は公平か・生きていけるかなど生の実態を証明)が必要としていると反論している。

 

(2) 国は説明責任を果たさなくてよいのか?~社会権規約が定める後退禁止原則

 

     社会権規約9条は「すべての者の権利を認める」と定め、2条1項は、「権利の完全な実現を進めること、利用可能な手段を利用すること」を求めている。後退的な処置を禁じ、必要なら合理性を立証せよとしている。

 

(3) 公的年金は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しなくてよいのか?~憲法25条と最低保障年金制度

 

    国は、年金だけでなく生活保護がある。原告は、生活保護は「自立の助長が目的」「資産調査と恥の意識の障害(生活保護とるのは恥)がある」と主張し、「生活保護も下げている」年金だけで「最低で文化的な生活が出来ること(25条)」です。

 

(4) 減額は年金受給者権の侵害ではないのか?~憲法13条、29条の問題

 

 原告は、「年金は財産権であり29条1項と個人の尊厳13条に保障されている」最高裁も(昭和53・7判決)で公共の福祉のためには制限があるとしている。①財産権の性質②変更の程度③変更が公益のどんな性質かなどを総合的に判断せよと言っている。①生活直結の年金②不利益は重大③平成24年法は原告等の意見を聞いていないので前記に反している。

 

(5) 国はどのように弁明しているのか?~減額の必要性、合理性をめぐる争点

 

 国は、「特例水準が長引き将来世代に影響・世代間の公平・制度の持続可能」が認められるべき。原告は、「世代間の公平とは何か・年金を削って積立金を残すのか・マクロ経済スライドは年金制度を破壊し憲法違反」。そういう憲法違反制度のために2・5%を引下げる憲法違反をするのか。

 

3 当面の課題

 

~裁判官の心を動かし勝利するために何をなすべきか?

 

  裁判所は、原告と被告の主張を裏付ける証拠調べに入ります。どういう人、どのように調べるかです。

 

(1) 原告団の陳述書作成運動を!

 

現在、最も大事なことです。原告は、裁判官の先輩です。内容は違っても最後の結論は伝わります。「ひとり一人が自分の歩んできた人生や今の生活で考えていること、政治への怒りを」書けば、今までの陳述でも、戦後どんな苦労をしたかなどは大きな感銘を与えています。東京では半分以上の人が陳述書を出し裁判官に大きな影響を与えています。

 

(2) 総論立証のできる組合側の証人を!

 

この間の年金制度の歴史、とくに度重なる制度改悪の経過や今回の減額の不当性について明らかにする証人が必要です。国と渡り合える人は年金者組合の中にいます。現在の国や裁判官では経験したことにないことを知っている生き証人がいます。

 

(3) 地元の学者の協力を!

 

憲法論、政策論、経済論、財政論などになりますが、それぞれの地域で年金の経済的波及効果は違うということが解りました。地元のことを証人も含めて準備することです。愛知はまだです。

 

(4) 現役世代、社会保障関係者の協力を!

 

「世代間公平論」を現職や若い人に反論してもらいます。愛知は愛労連と相談中です。

 

(5) 裁判所の姿勢を変える強固な運動を!

 

劣化している政治を「立法裁量だから仕方がない」という裁判所ではなく、憲法の立場か 

 

ら判決するようにさせます。同時に国民的な運動で多数派になる努力が大事です。憲法25条や教育を受ける権利の26条を実現していく、希望を語る運動です。

 

 

 

Ⅱ 「年金裁判」とは何ですか?

 

 

 

1 特例水準の解消が裁判のはじまりです。

 

   2000年から3年間、物価が下がっても「景気を冷え込ませないように」と1・7%の年金引き下げをしませんでした。国会は全会一致でした。(平成14年法)これが特例水準です。その後、2004年小泉内閣のとき「100年安心年金改革」としての年金法の改正をしました。この時には特例水準は「物価が上昇する中で解消」としました。しかし、経済は停滞し、賃金・物価の低迷で逆に2・5%に拡大しました。2012年11月野田内閣のとき、民主・自民・公明3党合意で「税と社会保障に一体改革」の中で、賃金・物価が上がらないのに3回に分けて特例水準2・5%に引き下げを強行しました。(平成24年法)

 

 2 「特例水準」解消の狙いは2つです。

 

   一つ目は、3年間で2・5%を引下げること。1%で(2013年10月)で年金受給者3900万人が約5000億円の減額です。二つ目は、年金自動引下げ装置「マクロ経済スライド」の導入のためです。この制度は、公的年金制度にある「物価が上がると年金も上がる」という優れた制度(実質的な価値の維持)を破壊する憲法違反の制度です。

 

   「キャリーオーバー制度」の導入

 

   マクロ経済スライドには、賃金と物価が上がるときに年金を0・9%(平成27年(2015年)現在)下げる制度です。しかし、年金が上がるときしか適用できません。(名目下限処置)そこで安倍内閣は2016年「年金カット法」を強行して、調整率(0・9%)を貯めておいて(キャリーオーバー)毎年0・9%が引き下げられると同じ効果のある制度改悪をしました。(2018年から実施)

 

 3 「行政不服審査請求」から裁判へ

 

   2013年6月の第21回全国大会で「特例水準」の解消に対して不服審査請求を決定し、その後の裁判も展望しました。第一次審査請求では全国で12万6642人が、第二次では2万7420人再審査請求をおこないましたが「社会保険審査会は「不満を述べているだけ」の不誠実な回答でした。2014年12月の第32回中央委員会で裁判に訴えることを決めました。

 

 4 国側の「移送攻撃」を跳ね返すことに成功

 

   (省略)

 

 5 「年金裁判」の目的とは?

 

    相次ぐ年金改悪に対して、抗議の意思を示す。

 

    公的年金の相次ぐ引下げに対する政府・厚労省説明責任を果たさせる。

 

    公的年金の在り方を法廷内外で国民的な議論を広げる場にする。

 

    裁判運動の中で、仲間づくりを進め組合員を増やす。

 

年金者組合の取り組み

 

    19879年(平成元年)組合結成来、最低保障年金制度創設を最大の目標として運動を続けている。受給資格期間25年を10年に短縮させた。

 

    2016年には「若い人も高齢者も安心の年金制度」署名74万筆を成功させた。

 

    2016年・17年には「政令指定都市国保・年金主管課長会議は「基礎年金の改善」など16項目の要請を政府・厚労省に出している。

 

    国連の社会権規約委員会は2013年か5月に日本政府に対して最低保障年金制度をつくるべきだとの勧告をおこなっている。

 

 6 「年金裁判」の到達点とは?

 

    2015年2月の鳥取原告団の提訴以来、44県本部39地方裁判所で5133人の原告が提訴している。生活保護裁判などとともに歴史的な社会保障の集団訴訟となっている。口頭弁論は290回を超えている。

 

    全国で弁護団が300人を超え、全国弁護団会議、高裁所在地弁護団会議を開いている。

 

    年金裁判を支援する会などは、都道府県単位で32、地域単位で334団体、2440人の個人が参加している。

 

    「特例水準を解消に反対する」自治体決議は100を超えた。毎月支給要求、支給開始年齢の引上げ反対、最低保障年金制度実現、マクロ経済スライド撤回等の自治体決議も33となり、全国的な盛り上がりを示している。

 

 

 

以下は表題だけ、冊子参照

 

 

 

Ⅲ 年金制度の変遷と問題点

 

 

 

Ⅳ 年金制度をどのように改革するか?

 

 

 

Ⅴ 原告の訴え

 

 

 

Ⅵ 弁護団からのメッセージ

 

 

 

Ⅶ サポターからのメッセージ

 

 

 

Ⅷ 資料編

 

年金裁判運動の記事 2017年の活動から